ゼップバウンドは痩せるという噂は本当？マンジャロとの違いとオンライン診療での処方・購入方法も解説

ゼップバウンドは、2024年12月に日本で承認された肥満症の治療薬です。
食欲を抑え満腹感を持続させたり、代謝を高めたりする作用を持ち、体重減少効果があると注目されています。

本記事では、「ゼップバウンドは本当に痩せるのか？」「マンジャロとどう違う？」といった疑問から、効果や作用のメカニズム、使用する際に知っておくべき副作用、安全な購入方法まで、解説します。

ゼップバウンドとは？

ゼップバウンドは、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬で、以下の条件を満たす肥満症に対して、2024年12月に承認されています。

・高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有している。
・かつ、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない。
・かつ、以下に該当する場合：
　・BMIが27kg/㎡以上であり、肥満に関連する健康障害を2つ以上有する
　・BMIが35kg/㎡以上

肥満症治療の基本である食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合に、医師が薬物治療が必要と判断した患者さんのみが対象となります。

基本情報と成分

ゼップバウンドの有効成分は、チルゼパチドといいます。
この薬剤は、あらかじめ注射針が付いたキット製品の注射剤です。
週に1回の投与で効果が持続するように工夫されています。

作用メカニズム

ゼップバウンドの有効成分であるチルゼパチドは、GIP受容体とGLP-1受容体の両方に作用する薬です。

• 食欲の抑制
  中枢神経系にあるGIP受容体とGLP-1受容体に作用することにより、食欲を抑え、食べる量を減らします。

• 満腹感の持続
  胃の動きを穏やかにし、食べたものが胃から腸へ移動するスピードを遅くします。これにより、満腹感が長く続き、食べ過ぎを防ぎます。
  
  
• 代謝の向上
  脂肪細胞のGIP受容体に作用し、脂質などのエネルギー代謝を促すことで、体重減少作用を示すと考えられています。
  
  
• 血糖値の改善
  血糖値が高いときにインスリンの分泌を助け、血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑えることで、血糖値を下げる作用もあります。

体内でタンパク質(アルブミン)と結合することで、体から排出されるまでの時間が長くなり、週1回の投与で効果が持続します。

ゼップバウンドは痩せるという噂は本当？ダイエット効果を解説

ゼップバウンドは、肥満症の治療薬として科学的に減量効果が認められています。

海外の臨床試験の結果

※信用できるデータ（公的機関など）を基に執筆してください。

食事や運動、またはメトホルミンという薬だけでは血糖値のコントロールが不十分な2型糖尿病患者さんを対象に行った海外の第II相試験(GPGB試験)では、以下のような結果が報告されています。

比較対象	結果(投与26週時)
プラセボ(偽薬)	ゼップバウンド5mg、10mg、15mgの各グループで、プラセボ群と比較して統計学的に有意に大きい体重減少が認められました。
デュラグルチド(既存のGLP-1)	ゼップバウンド10mgと15mgのグループでは、デュラグルチドと比較して統計学的に有意に大きい体重減少が確認されました。

・血糖降下作用：投与26週後、ゼップバウンドを投与した全てのグループで、プラセボ(偽薬)と比較してHbA1c(過去1～2か月の血糖値の平均)の低下量が明らかに大きく、既存のGLP-1受容体作動薬(デュラグルチド1.5mg群)と比較しても優れていることが確認されました。

・体重減少効果：この試験により、ゼップバウンドが、糖尿病患者さんの血糖コントロールを改善するだけでなく、体重減少においても既存の治療薬以上の効果を示すことが裏付けられました。

参考：医薬品インタビューフォーム：ゼップバウンド (ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス 他)

日本人を対象にした臨床試験の結果

※信用できるデータ（公的機関など）を基に執筆してください。

日本国内でも肥満症の患者さんを対象とした有効性検証試験(SURMOUNT-J試験)でも、その減量効果が証明されました。

投与群	ゼップバウンド10mg	ゼップバウンド15mg	プラセボ(偽薬)
ベースラインの体重(kg)	92.1±15.15	91.9±14.84	92.0±15.25
投与72週時の体重(kg)	76.3±16.07	71.9±14.70	90.5±16.01
投与72週時までの体重変化率(％)	-18.4±7.61	-22.6±8.90	-1.8±4.94

・体重減少効果：ゼップバウンドを72週間(約1年半)投与した結果、最高用量の15mg群では、平均で22.6%の体重減少が確認されました。また、偽薬を投与したグループ(-1.8%)と比較して、統計学的にも極めて有意な優越性(効果の高さ)が示されました。

参考：医療用医薬品 : ゼップバウンド (ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス 他)

ゼップバウンドの副作用と対処法

ゼップバウンドは週1回投与の注射薬ですが、投与を中止した後も体内で作用が持続します。

そのため、副作用の症状や血糖値の変化には十分な注意が必要です。

異常を感じた場合は、すぐに医師または薬剤師に相談しましょう。

よくある副作用

比較的多く現れる可能性のある症状は、主に消化器系の不調や注射部位の異常です。

・消化器症状：悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退など
・注射した場所の異常：赤み、痒み、痛み、腫れなど
・疲労、めまい、脱毛症など

重篤な副作用

以下のような重い副作用が現れる場合があります。
これらの症状が現れた場合は、使用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。

• 低血糖
  お腹がすく、冷汗が出る、血の気が引く、疲れやすい、手足のふるえ、けいれん、意識の低下などの症状が現れます。
  このような症状が出た場合には、すぐに糖分を含む食品(ブドウ糖、ジュースなど)を摂ってください。
  急に意識を失う可能性もあるため、家族やまわりの方にも事前にゼップバウンドを使用していることを伝えておくと安心です。
  
  
• 急性膵炎
  初期症状として、吐き気、嘔吐、激しい上腹部の痛み、背中の痛みなどが現れることがあります。
  
  
• 胆石症、胆のう炎、胆管炎または胆汁うっ滞性黄疸
  腹痛などの症状がみられた場合には、早めに医師へ相談してください。
  必要に応じて、画像検査で原因を詳しく調べることがあります。
  
  
• アナフィラキシー 、血管性浮腫
  全身のかゆみ、じんましん、喉のかゆみ、動悸、息苦しさなどの症状が現れることがあります。
  
  
• イレウス(腸閉塞)
  便が出にくい、吐き気、嘔吐、お腹が張る、腹痛などの症状が現れます。

副作用への対処法

胃腸障害が現れた場合には、急性膵炎の可能性を考慮して、画像検査などによる原因の精査が行われることがあります。

また、下痢、嘔吐が続くことで脱水になり、急性腎障害があらわれるおそれがあります。
適度な水分を補給し、症状が続く場合には医師に相談してください。

ゼップバウンドを使用するにあたって、低血糖症状への対処法などについても、あらかじめ十分理解しておきましょう。

ゼップバウンドとマンジャロの違いを比較

ゼップバウンドとマンジャロは、どちらもアメリカのイーライリリー社が開発した薬剤です。
この2つの薬は、有効成分は同じチルゼパチドで、GIPとGLP-1という2つのホルモンに作用します。

適応症や目的の違い

ゼップバウンドとマンジャロは、同じ成分を含みますが、適応症や治療の目的が異なります。

そのため、どちらを使用するかは必ず医師の診断と判断によって決定されます。

健康保険は、承認された適応症の治療にのみ適用されます。
そのため、承認された疾患以外の目的で使用する場合は、保険適用外となり、全額自己負担となります。

使い方や投与方法の違い

ゼップバウンドとマンジャロは、使い方や投与方法に違いはありません。

どちらも週1回の自己注射で使用します。
あらかじめ薬剤が満たされ、針のついたペン型注射器で、安全で簡単に投与できる設計です。

投与する曜日や注射する部位は、ライフスタイルに合わせて医師と相談して決めます。

薬価の違い

ゼップバウンドとマンジャロの薬価は以下のとおりです。

製品名	1本あたりの薬価	1ヶ月分(4回)の目安
ゼップバウンド	3,067円〜11,242円(用量により異なる)	約12,268円〜44,968円
マンジャロ	1,924円〜11,544円(用量により異なる)	約7,696円〜46,176円

• 保険診療の場合：
  薬価の約3割の自己負担で済みます。
  
  
• 自由診療の場合：
  薬剤費を含む全ての費用が全額自己負担となり、診察料や検査料も自費になるため、費用負担が大きくなります。

Q&A

保険適用されますか？

ゼップバウンドは、以下の条件に該当する場合にのみ保険適用されます。

・高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有している。
・かつ、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない。
・かつ、以下に該当する場合：
　・BMIが27kg/㎡以上であり、肥満に関連する健康障害を2つ以上有する
　・BMIが35kg/㎡以上

単なるダイエット目的や、上記の条件に該当しない場合には、保険適用されず自由診療となります。

どのくらいの期間継続する必要がありますか？

投与期間は、患者さんの症状や目標体重の達成度に応じて、医師が個別に判断します。
臨床試験で約1年半にわたる減量効果が確認されていますが、具体的な投与期間については必ず医師と相談しましょう。

ゼップバウンドをやめたら体重は元に戻りますか？

ゼップバウンドの投与を終了した後、薬の効果が体から消失するまでの期間を示すデータはありません。

しかし、ゼップバウンドの投与をやめると、薬による食欲抑制作用がなくなるため、食欲が再び強まり体重が再び増加する可能性があります。

特に、食事や運動などの生活習慣を改善していない場合、リバウンドする可能性が高くなります。

リバウンドを予防するために重要なポイントは以下のとおりです。

・投与中断の計画：投与をやめる前に必ず医師に相談し、投与中断のスケジュールを立てましょう

・食生活の改善：野菜やたんぱく質を中心としたバランスの取れた食事の継続を心がけましょう

・運動習慣の継続：ウォーキングや筋トレを習慣化し、筋肉量を維持することで、基礎代謝の低下を防ぎましょう

参考：ゼップバウンド(チルゼパチド)の投与終了後の体重減少作用が消失するまでの期間は？半減期は？ | 医療関係者向け – 日本イーライリリー株式会社

2型糖尿病の人でもゼップバウンドは使えますか？

使用できます。

2型糖尿病は、ゼップバウンドの保険適用の条件の1つです。

そのため、2型糖尿病で、肥満症と診断され、国の定める条件を満たす場合には、ゼップバウンドを肥満症の治療薬として使用できます。

ゼップバウンドの使用方法や注意点

ゼップバウンドを安全かつ効果的に使用するためには、正しい投与方法や用量の調整、そして使用上の注意点を理解することが重要です。

投与方法

ゼップバウンドは、週1回、同じ曜日に注射します。

・自己注射が可能：医療機関で十分な指導を受けた患者さん、またはご家族の方が注射できます。
・投与部位：お腹や太もも、二の腕に注射します。

使用用量

使用する用量は、症状や肥満の程度、体の状態に合わせて医師が細かく決定します。

開始量を４週間注射した後、４週間の間隔で２．５ｍｇずつ増量し、１０ｍｇに増量します。
週１回５ｍｇまで減量されることや、４週間以上の間隔で１回２．５ｍｇずつ増量し、最大週１回１５ｍｇまで増量されることがあります。

出典：患者向医薬品ガイド：ゼップバウンド(ゼップバウンド皮下注2.5mg 他)

投与スケジュール例

ゼップバウンドは週1回、決めた曜日に投与します。

投与を忘れた場合の対応は、次の投与予定日までの期間で異なります。
決して2回分を一度に投与しないでください。

次の予定日まで3日間(72時間)以上ある場合
気づいた時点ですぐに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与します。

次の投与予定日までの期間が3日間(72時間)未満の場合
投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与します。

自己注射をする際の注意点

• キットの異常がないか
  使用前に、注入器が壊れていないこと、異常がないこと、薬液に浮遊物がないことを確認しましょう。
  
  
• 部位の変更
  同じ部位(お腹、太もも、二の腕)の中で注射する場合は、皮膚の状態を保つためにも毎回注射する場所をずらしましょう。
  
  
• 用法用量を守る
  1キットは1回限りの使い切りです。
  効果が実感できないからといって、自己判断で投与量を増やしたり、週2回以上投与したりすることは避けましょう。
  
  
• 使用後の処理方法
  使用済みの注射器具は、主治医から指示された方法に従って、安全に廃棄しましょう。

使用できない人の特徴

以下の項目に当てはまる方は、ゼップバウンドを使用できません。(禁忌)

・ゼップバウンドにアレルギーのある方
・糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病による昏睡状態の方
・1型糖尿病の方
・2型糖尿病があり、重い感染症にかかっている方や、手術などの緊急を要する場合

また、以下に該当する方は、併用に注意が必要です。必ず事前に医師に伝えてください。

・重い胃不全麻痺など重度の胃腸障害のある方
・過去に膵炎にかかったことがある方
・低血糖をおこすおそれのある次の方
・脳下垂体機能に異常のある方、副腎機能に異常のある方
・栄養状態の悪い方、食事が不規則な方、食事が十分に摂れていない方
・激しい筋肉運動をしている方
・飲酒量が多い方
・増殖糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫にかかっているまたはかかったことがある方
・過去に腹部を手術したり、イレウスになったりしたことがある方
・妊婦または妊娠している可能性のある方
・授乳中の方

併用禁忌の薬剤

飲み合わせが必要な薬剤もあるため、他の薬を飲んでいる場合や、新しく使い始める場合は、必ず医師に相談するようにしましょう。

• 糖尿病薬
  ビグアナイド系薬剤
  スルホニルウレア
  速効型インスリン分泌促進剤
  α-グルコシダーゼ阻害剤
  チアゾリジン系薬剤
  DPP-4阻害剤
  インスリン製剤
  SGLT2阻害剤など

これらの薬剤とゼップバウンドを併用する場合、低血糖のリスクが上がりやすくなります。
リスクを軽減するために、糖尿病薬の量を減らす必要がある場合があります。

• 経口避妊薬
  ゼップバウンドの作用で胃の内容物の排出が遅れるため、避妊効果が低下するおそれがあります。

• クマリン系薬剤(ワルファリンカリウム)
  胃の内容物の排出が遅れ、薬効成分が血液中に移行する時間が遅れるため、抗凝固作用に影響する可能性があります。

ゼップバウンドは安い？オンライン診療での処方・購入方法も解説

ゼップバウンドの価格

ゼップバウンドの費用は、用量によって異なります。

用量	値段(1キ ット)
2.5mg	3,067円
5mg	5,797円
7.5mg	7,721円
10mg	8,999円
12.5mg	10,180円
15mg	11,242円

保険適用されると、約3割の自己負担となります。
一方、保険適用外の自由診療の場合は、薬剤費を含むすべての費用が全額自己負担となります。
費用は医療機関によって異なり、高額になる場合もあります。

ゼップバウンドは市販されているのか

ゼップバウンドは、医師の診察と処方が必要な医療用医薬品で、現在、市販薬(一般用医薬品)はありません。

医師から処方されていない状態で医療用医薬品を購入することは禁止されています。

個人輸入で入手するリスク

ゼップバウンドのような医療用医薬品を、インターネットなどを通じて個人輸入で購入することはとても危険で、推奨されません。

・偽造品・粗悪品の危険性
有効成分が含まれていなかったり、不純物が混入していたりする可能性があります。

・品質の劣化
ゼップバウンドは冷蔵保存が必要な薬剤です。
不適切な温度管理などで品質が劣化している可能性があります。
本来の効果が得られないだけでなく、健康被害にもつながるおそれがあります。


・重篤な副作用を見逃すリスク
医療用医薬品は副作用が出た時のサポート体制が重要です。
医師による適切な診察や血液検査がないと、急性膵炎や低血糖といった重い副作用の兆候を見逃すリスクがあります。

個人輸入はリスクが大きいため、避けるようにしましょう。

通販やオンライン診療で購入できるのか

ゼップバウンドは通販サイトでは購入できませんが、オンライン診療に対応している医療機関で、医師の診察を受けて処方してもらうことは可能です。

安全管理が必要な薬剤のため、医師は患者さんの基礎疾患や健康状態を詳細に把握した上で、処方するかどうかを判断します。

通院が難しい場合も、安易に通販サイトで購入するのではなく、オンライン診療に対応している信頼できる医療機関を利用するのが安全です。

オンライン診療に必要なもの

オンライン診療を受ける際は、以下のものを用意してください。

・情報通信機器：パソコンやスマートフォン、タブレットなど(メールやチャットのみでの診療はできません)
・本人確認書類：マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど(本人であることを確認するため)
・健康保険証　※保険診療を受ける場合には必須

引用：オンライン診療について 国民・患者の皆様へ｜厚生労働省

オンライン診療での処方の流れ

オンライン診療を利用する際の一般的な流れは以下のとおりです。

1.医療機関の選択：オンライン診療に対応している医療機関の公式サイトから予約します。予約は数分程度ですみます。

2.医師による診察：予約した時間に、スマートフォンやパソコンを使い、医師とビデオ通話で診察を受けます。診察時間は10分程度が目安です。

3.薬の受け取り：薬が処方された場合は、近くの薬局での受け取り、または医療機関から指定した場所への配送で受け取れます。場合によっては、最短翌日に指定した場所に届けてくれる場合もあります。

ゼップバウンドを安全に服用し効果を実感しましょう

ゼップバウンドは、GIPとGLP-1という2つのホルモンに作用する肥満症治療薬であり、日本の臨床試験でも体重減少効果が認められています。

ただし、効果が期待できる一方で、使用には医師の適切な診察と処方が必須です。

ゼップバウンドの治療を受けてみたいと思う方は、ご自身の症状や保険適用条件について、必ず医師に相談しましょう。